雲の写真集
「高度1万メートルから見た雲たち」

以前、NHKのハイビジョン特集だったかでオーストラリアに出現する長さ数千キロに渡って伸びる筋状の雲「モーニング・グローリー」に関する番組を見たことがありました。その雄大な姿にはただただ驚かされたのですが、その雲を「雲の上」から一目見ようと世界中からグライダー乗りが集まっているのを知ってさらに驚きました。さまざまな気象条件が相まってようやく出現する雲ですから、まったく見られないときもあるのだそうで、それでも年に一回、雲の出現しやすい時期にその場所に集まってくるグライダー乗りの情熱に脱帽でした。

その情熱に匹敵するかのような雲に対する熱い思いが込められた写真集が発刊されました。

カメラマン今井正子さんが10年間に撮影した1万枚の写真から厳選して編まれたこの写真集には、高度1万メートルを飛行するジェット機の機窓から撮影した80余枚が収められています。飛行機の窓側の席が嫌いで、しかも座るや否や眠ってしまう私としては信じられないことですが、今井さんは掲載写真のすべてに撮影データはもとより、そのときの撮影状況と自分が感じた雲の印象などを克明に記しています。加えて、気象庁OBの綾一(あや はじめ)さんによる詳細な解説がすべての写真についており、雲の成り立ちの理由がわかる構成になっています。

撮影者の今井正子さんのお父上、今井正人さんはセーラーでもあり、小型船舶用のレーダーリフレクターを取り扱う販売会社の役員。旧NORC時代から、セーラーに対して多くの情報をご提供いただいています。

セーリングに役立てるにはちょっと高度が高すぎるのですが、雲の理屈を知ることは知的な好奇心を満たしてくれます。ひとつとして同じ形の雲はないとのことですが、海の表情もまた同じ。セーリングを終えてキャビンで本書を眺めていると、海から空へ新たなフィールドが広がります。

「高度1万メートルから見た雲たち」(成山堂書店・刊、今井正子・写真と文、綾一・解説、本体価格2800円)

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