アメリカズカップ・スペシャル・レポート7

2月11日 バレンシア

今回のアメリカズカップのレースの予告信号は10時に発せられることになっている。

冬の朝10時6分にスタートとなると、関係者一同、夜明け前からもそもそ動き始め、レース艇の出艇は、まだ暗い7時前になる。日本のインカレの学生たちよりも早い。

バレンシアの夜明け(photo by Kazu Nsimura)

毎朝見るバレンシアの光景は、だからこの写真のような時間帯になる。

さて、今日はレイデイ。

アメリカズカップのレースに関しては何も起きません。

ワタクシも、今日はレースそのもの以外のお仕事関係の調べ事と、ラッキーであれば、〈USA〉がセーリングに出て、それをサポートボートに乗せてもらって見る予定。

ちょこっとトオマケ

なので、今日の日記はここまで終わりますが、記録したことの整理を兼ねて、ちょっとオマケを。

これは、昨日〈USA〉のスキッパー/ヘルムスマン、ジェームズ・スピットヒルの話をBMWオラクルのコンパウンドに聞きにいった時に見つけた〈USA〉の精巧なモデル。すごく精密だ。この凝り様からすると、きっと2007年の横浜国際ボートショー出展用にと、RC44の模型制作を依頼したオランダのメーカーのものに違いない。あのRC44の模型は、ラッセル・クーツもすごく気にいっていた。

(photo by Kazu Nishimura)

あのRC44の模型の制作料が当時2万ユーロ強だったから、それからすると、この〈USA〉のモデルは、発注主も発注主であることだし、J24の新艇より高価であることは間違いなさそうだ。

凝りに凝ったこの模型のおかげで、ウイングがどのように立てられているのか、フラップをどのようなシステムで動かしているのか、をおおよそ理解できた。

下の写真は、2月8日、〈USA〉が浮かんでいるBMWオラクルの仮設ベースキャンプにあったフロートの船台、というか受け。

(photo by Kazu Nishimura)

後ろに案内係のお姉さんがソワソワしながら待っていて、「もう帰りのバスが出るよ」とせかすので写真がブレてしまったが、フロートの断面形状が分かる。かなり小さい。

BMWオラクルレーシングでは、技術陣は〈USA〉のフロートのことをAma と呼び、センターハルのことをVakaと呼ぶ。

アマはポリネシア語でアウトリガーカヌーのフロート、もしくはダブルハルのカヌーの場合は左舷側の船体を指す言葉だ。ヴァカ若しくはワカ若しくはワタは、広く太平洋の航海民の間では「カヌー」を指す言葉だ。

ついでに言うと、日本神話に出てくる海の神である「わたつみ」は、ポリネシア語では「木のカヌー」の意にもなる。

BMWオラクルレーシングが、ポリネシアの船用語を用いていることに興味が沸く。〈USA〉のフロートが、ポリネシアのアウトリガーカヌーのフロートを思い起こすほど細くて華奢だからだろうか?

下の写真は、アリンギのパブリック・スペースの入り口にモニュメントとしておかれている〈アリンギ5〉のS字型ダガーボードの旧モデル。

写真に写っている内側(海中に入っていくと上側になる)面のキャンバーが裏側よりも大きく、先端部が上向きの揚力を、中間部が風上側への揚力を発する形状になっている。一人ではとても持ち上げられないくらい重い。

(photo by Kazu Nishimura)

(photo by Kazu Nishimura)

(photo by Kazu Nishimura)

右の写真が、ダガーボード上部にある、ボード上げ下げ用のシステム。ダガーボード内にセンサーが埋め込まれているらしく、ケーブルが何本かボード内から出てきていた。

(レポート/西村一広  http://www.compass-course.com

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