コラム「海のファッションにはワケがある」

illustration by Tadami

時間を経たモノの発祥にまつわる話には諸説ありますが、海のファッションもその伝統を紐解こうとすると、さまざまなエピソードが聞こえてきます。そんなエピソードをご紹介するこのコラム。へぇー、そんなワケがあったのか・・・・・・とちょっと驚いてください。

今回のテーマは「デッキシューズ」です。

先月、新しいシューズを買いました。レザーのデッキシューズです。通勤に履いているシューズより少し小さく感じるサイズを選び、今は足に馴染ませているところです。

海に出た時、命を守る防御の基本は足元だと考えているので、海で履くシューズはどんな種類でも真剣に選びます。そもそもヨットは、縦方向と横方向に同時に傾きながら進む特殊な乗り物です。しかも一定の傾斜が保たれるのではなく、不規則な前後左右の揺れが連続するという非常に厄介な乗り物なのです。

日常生活では経験できない特殊な揺れに対処するには特殊な道具が必要になり、そのひとつがデッキシューズというわけで、ヨットで履く靴は海で使う最初の道具ということになるのです。

ところで、あなたは間に合わせのシューズで安易にヨットに乗っていませんか? すべての基本は足元からです。海に出るにふさわしい靴を履き、安心安全なセーリングを楽しんでほしいと願います。

話は変わりますが、世界に名を馳せるデッキシューズメーカーが靴底を開発したときの逸話を紹介します。

氷の上を滑らず歩く愛犬の姿を見て、その足裏にヒントを得て靴底が開発されたのだそうです。犬の足裏には車のタイヤのように水を疎水する細かい溝があり、スリップを緩和するのです。自然の中で発見した偶然が、デッキシューズに形を変え、多くの人命を守ってきました。マリンシューズの名品は、深い観察力から生まれた逸品と言えるでしょう。

自然界には、学び、活かすべき多くの摂理が潜んでいます。もっと海に出て、観察力を磨きたいものです。

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