International14の「今」

 

年末・年始にオーストラリア・シドニーで開催されたInternational14世界選手権に参加した柳澤康信さんから、現地で見た同クラスの「今」を伝えるレポートをいただきました。詳細は2月下旬発行のJ-SAILING81号に掲載しますが、本ブログではその一部をお届けします。(photo by Yoshihisa Fujii) 

International14の歴史は古く1800年代後半には原型が現れ、1927年に41艇が集まりPrince Of Wales杯を開催、初めてクラスとして公となる。

1950年にはクラス協会が設立され、英国を中心にオーストラリア、カナダ、アメリカ、日本、ニュジーランド、フランス、ドイツに普及し始める。

日本では1971年に初めて進水。以後おおよそ40年にわたりワールドに選手団を派遣してきた。International14のクラスルールは特異で、「より速くあるために常に革新のする」というポリシーの下、ルール規定内であれば艇、セールのデザインは自由。

49erはじめ五輪キャンペーンに参加する者、VOLVOオーシャンでヘルムを取った者、ACボートのデザイナーとして活躍した者などがいる一方、70歳を超えるベテランまでがワールドに参加し、レベルが非常に高いものの、それでいてアットホームなフリートといえるだろう。

一方で、個人が主体のクラスがゆえに苦労も多い。

ワールドにフル日程で参加ともなると、2週間を超える長期休暇の取得に加えて、開催地までのコンテナ運搬、そして遠征のアゴ、アシ、マクラまで個人負担が常識。レギュラー参加国であり、登録艇数も多いアメリカですら、今回のチームレースには参加してこなかった。景気悪化の影響で、出費の面もあるが、長期休暇を会社に申請しにくい状況になっているとのこと。

日本も過去継続してきたチームレース参加を途切れさせないためにチーム最低数の4艇を送ったものの、選手はチーム戦、個人戦合わせても延べ7人。私も前半のチームレースだけに参加。後半個人戦は、外洋チーム「ブロス」をいまはメインに活動している川西君に参加いただいて交代。チーム編成4艇目もオーストラリアとカナダから助っ人を頼みて、混成ながら日本チームとしてなんとか体裁を保つことができた。新しい世代メンバーを拡充してゆくことが本当に急務だ。

各国のフリート状況であるが、前回ワールドを主催したドイツはその機会の勢いを保ったまま順調に艇数を伸ばしていた。

他国は日本と同様の固定メンバーによる高齢化とメンバー減少という問題を抱えていた。そのなかでもカナダとイギリスの取組を紹介したい。

カナダは多少特異なケースにはなるが、古くからのコアメンバーがシーズン毎に最新艇を買換える。一年落ちの艇(といってもまだまだ新艇と同等)を、カナダ・セーリング界でも有望な若手コンビに「練習・レースに参加すること」だけを条件に無償で1年間貸与。ただし乗艇していないと即座に没収。継続する意向のあるコンビには予算に応じて他メンバーの中古艇も含めて紹介してメンバーを増やしていく。また陸続きのアメリカとも合同で北米選手権などレースの機会を増やし、フリート活動も活性化。新メンバーの誘致に成功している。おおよそ10年かかってはいるが、一時は4艇にまで減ったフリートが、30艇近くの登録までに復活した。毎年艇を買換えられる、呆れるほどの資産家の存在が羨ましいかぎりですが。

イギリスもカナダの例に倣って貸与システムを採用。またフランス、イタリアなど、これからの地区に欧州選手権をもっていくことで誘致と市場の拡大を図っている。今回は往年の名セーラーが息子をクルーにコンビで参加している艇が複数あった。前回ドイツでは いまひとつの成績だった親子コンビが、今回のシドニーではシングル上位にも入っている。いまは修行の身でも、いずれは自分で ヘルムを取るだろう。

日本でも協会共有ということで最新艇と同等の艇を1艇でも用意できれば同じようなことが可能だ。  また関東周辺ばかりでなく新しい水域のレースに遠征すること、International14だけでなく、29er、49erなどスピードに華があるスキフクラスと共催すれば、いずれかのクラスに誘致を図ることができる。

問題は長期的な対策であろう。イギリスのように歴史があり、クラスとしても認識されていてヨットクラブがジュニアから次のクラスにステップアップしていけるシステムは日本では残念ながら機能していない。「部活クラブ」が主軸であるために、どうしてもセーリングを続けていくセーラーが途切れてしまう。うちのクラスに是非どうぞ、と願いたいが、あらゆるクラスで協業してジュニア・ユースがセーリングを続けていきたいと感じてもらえる受け皿を整えていかねばならないだろう。

宇都・石田チーム(左)

 

 

 

 

下里・川西チーム

萩原・菊地チーム

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